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相続税の申告が不要か確認する方法|基礎控除と4つの手順を解説

ご家族が亡くなったあと、「うちは相続税の申告がいるのだろうか」と不安になる方は少なくありません。申告には期限があり、放っておくわけにもいきません。

先に結論をお伝えします。遺産の総額が「3,000万円+600万円×法定相続人の数」以下なら、相続税の申告は原則として不要です。国税庁の発表では、令和5年に亡くなった方のうち、相続税の申告が必要だったのは9.9%でした。10人のうち9人は、申告がいらなかったことになります。

ただし、「税額が0円になるのに申告は必要」という場合もあります。この記事では、申告が不要かどうかを自分で確認する手順と、間違えやすい点を、鹿児島市の税理士が順にご説明します。

相続税の申告が不要になるのは基礎控除以下のとき

相続税には「基礎控除」という、税金がかからない枠があります。遺産の総額がこの枠の中に収まっていれば、相続税はかからず、申告もいりません。税務署に「申告は不要でした」と届け出る必要もありません。

基礎控除の額は、次の式で決まります。

3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

この式で出した基礎控除額と、亡くなった方(被相続人)が残した相続財産の合計を比べる。これが、申告不要かどうかを判断するときの基本です。

法定相続人とは、民法で決められた、相続する権利のある人のことです。配偶者はつねに相続人になります。それに加えて、子がいれば子、子がいなければ親、親もいなければ兄弟姉妹、の順に相続人になります。

法定相続人の数基礎控除の額例
1人3,600万円子1人
2人4,200万円配偶者と子1人
3人4,800万円配偶者と子2人
4人5,400万円配偶者と子3人

たとえば、お父様が亡くなり、相続人がお母様とお子さま2人の場合、基礎控除は4,800万円です。遺産の総額が4,800万円以下なら、相続税の申告は不要です。

相続税の申告が不要かどうかの確認を急いだほうがよい理由

「たぶん不要だろう」と思っていても、確認は早めに済ませてください。理由は3つあります。

1つ目は、申告に期限があることです。必要だと分かったときに残りの日数が少ないと、書類を集めるだけで期限が来てしまいます。

2つ目は、相続を放棄するかどうかの判断にも関わることです。借金が多い場合の放棄は、原則として3か月以内に家庭裁判所で手続きをします。財産と債務を書き出す作業は、どちらの判断にも使えます。

3つ目は、ご家族の間で遺産の分け方を話し合うときに、全体の金額が分かっていたほうが話が進むことです。確認のために作った財産の一覧は、そのまま話し合いの資料になります。

相続税の申告が不要か確認する4つの手順

申告が不要かどうかは、次の4つの手順で確認できます。紙と電卓があれば、ご自宅でできます。

手順1 法定相続人を数える

亡くなった方の、生まれてから亡くなるまでの戸籍を取り寄せて、相続人を確かめます。前の結婚でのお子さまや、養子縁組をした方がいないかを見るためです。

数えるときの決まりが2つあります。相続を放棄した人がいても、放棄がなかったものとして数えます。養子は、実の子がいる場合は1人まで、いない場合は2人までを数に入れます。

手順2 基礎控除の額を計算する

手順1で数えた人数を、先ほどの式に当てはめます。3人なら、3,000万円+600万円×3人=4,800万円です。

手順3 財産と債務を書き出して合計する

亡くなった方の財産を、すべて書き出します。主なものは次のとおりです。

そこから、借入金や未払いの税金などの債務と、葬式にかかった費用を引きます。

土地は、固定資産税の評価額ではなく、「路線価」などを使って計算します。建物は、固定資産税の評価額をそのまま使います。土地の評価は少し手間がかかるので、まずは固定資産税の評価額を1.1倍ほどにして、おおよその額を出してみてください。これは当事務所が目安として使っている方法で、正確な評価ではありません。

手順4 基礎控除と比べる

手順3の合計が、手順2の基礎控除より少なければ、申告は不要です。国税庁のホームページには「相続税の申告要否判定コーナー」があり、数字を入れると同じ確認ができます。

合計が基礎控除の8割を超えているときは、ご自分の計算だけで決めないでください。土地の評価や、次の項目の足し引きで、結果が変わることがあります。

申告が必要かどうかの判定は、無料で行っています

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申告が不要か確認するときに足すものと引くもの

手順3でよく漏れるのが、「亡くなった時点の通帳には載っていない財産」です。3つあります。

生命保険金は非課税の枠を引いて足す

亡くなった方が保険料を払っていた生命保険の保険金は、相続税の対象になります。ただし、相続人が受け取る場合は「500万円×法定相続人の数」までが非課税です。

相続人が3人なら、1,500万円までは足さなくて構いません。保険金が2,000万円なら、超えた500万円だけを財産に足します。相続人ではない人が受け取った保険金には、この枠は使えません。

亡くなる前の贈与は足し戻す

亡くなる前の一定の期間に、相続人が贈与を受けていた場合、その額を財産に足します。この期間は、これまで「亡くなる前3年以内」でした。

税制の改正で、この期間は段階的に7年まで延びます。令和9年1月以降に亡くなった場合から、足し戻す期間が少しずつ長くなり、令和13年1月以降は7年になります。延びた4年分の贈与については、合計100万円までは足さなくてよい決まりがあります。

「毎年110万円ずつ子どもに渡していた」というご家庭は、ここを忘れがちです。通帳の過去の動きを、さかのぼって確かめてください。

死亡退職金にも非課税の枠がある

お勤めの途中で亡くなり、会社から死亡退職金がご遺族に支払われた場合も、相続税の対象になります。生命保険金と同じく、相続人が受け取る場合は「500万円×法定相続人の数」までが非課税です。保険金の枠とは別に使えます。

相続時精算課税制度で受けた贈与も足す

生前に「相続時精算課税制度」を選んで贈与を受けていた場合、その贈与は何年前のものでも、相続財産に足して計算します。この制度は、贈与のときには2,500万円まで贈与税がかからない代わりに、相続のときにまとめて精算する仕組みです。

令和6年1月以降の贈与については、年110万円までの部分は足さなくてよいことになりました。制度を使っていたかどうかは、過去の贈与税の申告書で確かめられます。分からないときは、税務署で確認する方法もあります。

債務と葬式費用は引ける

住宅ローンなどの借入金、亡くなったあとに届いた医療費や税金の請求は、財産から引けます。お通夜と葬儀の費用も引けます。香典返しや、お墓を買った費用は引けません。

実際の数字で確認してみる

ここまでの手順を、当事務所でよくあるケースに当てはめてみます。お父様が亡くなり、相続人はお母様とお子さま2人、という場合です。

財産・債務金額計算に入れる額
預金2,000万円2,000万円
自宅の土地(路線価で評価)1,700万円1,700万円
自宅の建物500万円500万円
生命保険金2,000万円500万円(非課税1,500万円を引く)
葬式費用150万円−150万円
合計4,550万円

基礎控除は4,800万円ですから、合計の4,550万円はそれより少なく、申告は不要です。保険金の非課税の枠を知らずに2,000万円をそのまま足すと、6,050万円になり、「申告が必要だ」と誤って判断してしまいます。

反対のケースもあります。同じご家族で、自宅の土地が3,000万円だったとします。合計は5,850万円で、基礎控除を超えます。小規模宅地等の特例を使えば、土地は600万円として計算でき、合計は3,450万円まで下がります。税額は0円です。それでも、次にご説明するとおり、この場合は申告が必要です。

税額が0円でも相続税の申告が必要なケース

ここが、いちばん間違えやすいところです。次の2つの特例は、申告書を出すことが、使うための条件になっています。特例を使って税額が0円になっても、申告そのものは必要です。

配偶者の税額の軽減を使う場合

配偶者が相続した財産は、1億6,000万円か、配偶者の法定相続分のどちらか多いほうまで、相続税がかかりません。とても大きな枠ですが、申告書に戸籍や遺産分割協議書などを付けて出さなければ使えません。

申告の期限までに遺産の分け方が決まっていないと、原則としてこの軽減は受けられません。その場合は、「3年以内に分ける見込みです」という書類を付けて申告し、分け方が決まってから手続きをし直します。

小規模宅地等の特例を使う場合

亡くなった方が住んでいた土地を、配偶者や同居していた親族が相続する場合などに、土地の評価額を330㎡まで80%減らせる特例です。評価額が3,000万円の土地なら、600万円として計算できます。

この特例を使うと、遺産の総額が基礎控除を下回ることがよくあります。それでも、特例を使う前の額が基礎控除を超えているなら、申告は必要です。「計算したら基礎控除より少なかったので、何もしなかった」というのが、いちばん多い間違いです。

相続税の申告が不要と自己判断しやすい落とし穴

ご自分で確認して「不要」と判断された方から、あとでご相談を受けることがあります。原因は、だいたい次の3つです。

1つ目は「名義預金」と呼ばれるものです。亡くなった方が、配偶者やお子さま、お孫さんの名義で積み立てていた預金は、名義にかかわらず、亡くなった方の財産として扱われることがあります。通帳や印鑑を誰が管理していたか、名義の方がその預金を知っていたかが、判断の分かれ目になります。

2つ目の土地は、市街地では路線価で計算します。路線価は、固定資産税の評価額より高くなるのがふつうです。鹿児島市内でも、場所によってはかなりの差が出ます。

3つ目の贈与は、通帳の動きを見れば分かることが多いです。亡くなった方の口座から、ご家族の口座へまとまった金額が移っていないかを、少なくとも過去3年分は確かめてください。税務署は、金融機関に照会して過去の入出金を調べることができます。ご家族が覚えていない振り込みが、あとから見つかることもあります。

このほか、亡くなる直前に引き出して手元に置いていた現金、貸金庫の中のもの、他人に貸していたお金、ネット銀行やネット証券の口座も、漏れやすい財産です。郵便物やスマートフォンのアプリを手がかりに、取引のあった金融機関を洗い出してください。

申告が必要なのにしなかった場合、あとから本来の税金に加えて、加算税や延滞税がかかります。配偶者の軽減や小規模宅地等の特例も、期限内に申告していれば使えたはずのものが、使いにくくなります。

申告が不要か確認したあとにすること

確認の結果、申告が不要だった場合、相続税については何もする必要はありません。ただし、相続の手続きがすべて終わったわけではありません。不動産の名義を変える登記や、預金の解約、年金の手続きは別に必要です。

申告が必要だった場合は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に、申告と納税をします。申告書は、亡くなった方の住所地の税務署に出します。相続人の住所地ではありません。

納税は、原則として現金での一括払いです。遺産の多くが土地で、納税にあてる現金が足りないこともあります。分割して納める方法もありますが、手続きに条件があるため、早めの準備が欠かせません。

10か月は長いようで、戸籍を集め、財産を調べ、分け方を話し合っていると、あっという間に過ぎます。確認だけでも、四十九日が過ぎたころに始めることをおすすめしています。

相続税の申告が不要か税理士に確認してもらう方法

当事務所では、申告が必要かどうかの判定を無料で行っています。次のものをお持ちいただければ、その場でおおよその見当がつきます。そろっていなくても構いません。

基礎控除を大きく下回っていれば、「申告は不要です」とお伝えして終わりです。費用はいただきません。基礎控除に近い場合や、特例を使う場合は、土地を現地で確認したうえで、申告までお手伝いします。報酬は、遺産の総額5,000万円までで330,000円です。

相続税の申告が不要か確認するときによくある質問

申告が不要なときに税務署へ届け出は必要ですか

必要ありません。基礎控除以下であれば、何も出さなくて大丈夫です。

遺産の分け方が決まっていなくても確認できますか

できます。申告が必要かどうかは、遺産の総額と法定相続人の数で決まります。誰がいくら受け取るかは、この確認には関係しません。

相続を放棄した人がいると基礎控除は減りますか

減りません。基礎控除を計算するときの法定相続人の数は、放棄がなかったものとして数えます。

税務署から「相続税についてのお尋ね」が届きました

亡くなったあと、税務署から申告が必要かどうかを尋ねる書類が届くことがあります。届いたからといって、申告が必要と決まったわけではありません。財産の内容を書いて返送すれば足ります。書き方が分からないときは、書類をお持ちください。一緒に確認します。

確認だけを税理士に頼むと費用はいくらかかりますか

事務所によって違います。当事務所では、申告が必要かどうかの判定は無料です。財産の一覧を正式な書面で作ってほしい、という場合は、別に費用をお見積もりします。

亡くなってから10か月を過ぎてしまいました

申告が必要だった場合は、気づいた時点でできるだけ早く申告してください。遅れた日数に応じて延滞税がかかるため、早いほど負担が少なくなります。まずは状況をお聞かせください。

相続税の申告が不要かどうかは、法定相続人を数え、基礎控除を計算し、財産を合計して比べる、という4つの手順で確認できます。基礎控除に近いとき、土地があるとき、特例を使いたいときは、ご自分だけで判断せずに、一度ご相談ください。

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代表税理士 田上 浩一

この記事を書いた人

田上 浩一つむぎ税理士事務所 代表税理士

鹿児島市生まれ。市内の会計事務所に12年勤めたあと、2011年に開業。個人事業主と小さな会社の税務を担当しています。

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