森乃鶯句集 第三集

雨は急いで帰らない。

止まる日も、濡れる日も、いつか晴れるまでの百句。

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第一章

降りはじめ

思い通りにならない日もある。

雨ひとつ予定の外から降ってくる

朝の雨今日の計画書き直す

雨が降る聞いてないぞと空を見る

雨の日は急ぐ理由も濡れてゆく

雨ひとつ傘を忘れて立ち止まる

雨の朝うまくいかない予感する

雨が降る昨日の自信を薄くする

雨の日に限って靴がよく濡れる

雨ひとつ小さな予定を狂わせる

雨の音返事の来ない昼下がり

雨が降る頑張るだけじゃ足りぬ日に

雨の日はいつもの道も遠くなる

雨ひとつ思いどおりにならぬ空

雨の午後やる気の場所を見失う

雨が降るそんな日だってあるらしい

第二章

雨宿り

進まない。だから、少し休んでみる。

雨宿り何もしないをしてみよう

雨の日は止まった時計も責められぬ

雨宿り急いだ人を先にやる

雨の音休めと言った気がしたり

雨の日に答えを出さぬ強さ知る

雨宿り濡れないことも仕事なり

雨が降る今日はここまででもいいか

雨の日は昼寝の理由がよくできる

雨宿り焦りも隣に座らせる

雨の午後何もしなくて暮れてゆく

雨が降る止まれば見えるものもある

雨宿り負けたわけではまだないさ

雨の日に遠回りする暇もある

雨の音黙っているのも悪くない

雨宿り立ち止まるのも道のうち

第三章

土砂降り

どうにもならない日は、本当にどうにもならない。

土砂降りの雨に理屈は通じない

雨が降る努力の外にも雨は降る

強い雨今日は何しても駄目な日だ

雨の夜自信ばかりが流れ出す

雨が降る売れない理由も分からない

雨の日に数字を見るのはやめておけ

雨ひどく既読のつかぬ夜になる

雨が降る仕事も恋も返事なし

雨の音考えすぎて眠れない

雨が降る正しい道も分からない

雨ひとつ悔しい夜を長くする

雨の日は昔の傷までよく疼く

雨が降るあいつばかりが晴れて見え

雨の窓他人の春を眺めてる

雨が降る比べるほどに濡れてゆく

雨の中自分だけまだ進めない

雨の日に諦めようかと口にする

雨が降る投げたくなる日もそりゃあるさ

雨の夜誰にも言えぬことがある

雨ひとつ底まで落ちてまだ降れる

第四章

雨の中を歩く

晴れるのを待たず、濡れたまま進む。

雨の中傘をひらいてまた歩く

雨が降る晴れるまでなど待ってられぬ

雨の日も一歩は一歩変わらない

雨の道濡れた靴でも前へ行く

雨が降る小さな仕事をひとつやる

雨の日にメール一本返しておく

雨の朝できることから手をつける

雨が降る完璧なんて置いていけ

雨の中うまく歩けずそれでいい

雨の日も昨日より少し先にいる

雨が降る失敗ひとつ連れて行く

雨の道転んだ場所を覚えてる

雨が降る傷の分だけ傘を知る

雨の日に助けてくれた声がある

雨が降るひとりじゃないと知る夜に

雨の中誰かの傘へ手を伸ばす

雨の日も笑えることはちゃんとある

雨が降るコンビニ珈琲まだ温い

雨の道水たまりなど踏んでいけ

雨が降る濡れても今日は進んでる

第五章

雨上がり

少しずつ、景色に色が戻ってくる。

雨上がりいつもの道が光ってる

雨のあと葉っぱの緑濃くなった

雨上がり失くしたものを数えない

雨のあと残ったものを抱いてゆく

雨上がり遠くの山が近くなる

雨のあと昨日の悩みが少し軽い

雨上がり洗ったような空を見る

雨のあと誰かの声がよく届く

雨上がりもう駄目だったはずなのに

雨のあとまたやってみる気になった

雨上がり傷まで少し乾いてく

雨のあと濡れた靴にも陽が当たる

雨上がり遠回りにも意味がある

雨のあと戻らぬものもそのままで

雨上がり前より少しやさしくなる

第六章

水たまりの空

雨が降ったから、見えるものもある。

雨のあと水たまりにも雲が行く

雨の日を無駄と言うにはまだ早い

雨が降り根を張るものもあるらしい

雨の日が今日の自分をつくってる

雨のあと泣いた理由も薄くなる

雨が降る昔の僕なら逃げていた

雨の日もここまで来たと笑えれば

雨のあと強さの意味が変わってる

雨が降る耐えたことより歩いたこと

雨の日を抱えて明日へ行けばいい

雨のあと晴れだけじゃない空を知る

雨が降るまた降るだろうそれでいい

雨のあと傘を閉じれば風が来る

雨上がり濡れた昨日を連れて行く

雨上がり水たまりにも空はある